推薦図書紹介

■小室直樹『日本人のための憲法原論』 著者 小室直樹
ISBN978-4-7976-7145-2
紹介者:工藤秀雄(西南学院大学商学部教授)
【紹介文】
題名に憲法とあるが、現在の日本国憲法の護憲・改憲を論じるのではなく、そもそも今の日本人が、憲法を生かし機能させられる思想・知見を持ち合わせているのかを本著は問う。そのため本著は思想史、民主主義・資本主義史をおさらいしながら、戦後の現代日本史について論じ、問いに答える。
  • 53P

    憲法とは国民に向けて書かれたものではない。誰のために書かれたものかといえば、国家権力すべてを縛るために書かれたものです。司法、行政、立法・・・これらの権力に対する命令が、憲法に書かれている。

  • 278P

    近代民主主義の平等の考えは元来、キリスト教の考えから生まれたものですから、現実の人間を経済的に平等にしてしまえとまでは言いません。
     たとえ神様から見て平等であっても、実際には王様もいれば、貧乏人もいる。
     しかし、神様はそれについては何もなさらない。みんなを平等にはしようとはしないわけです。
     それと同じように、民主主義も、金持ちと貧乏人がこの世の中にいることまで変えようとは思わない。あくまでも、法の前に平等に扱うというだけです。
     その考え方はロックの社会契約説でも基本的には同じです。
     彼はたしかに『自然人』は平等であるとは考えましたが、それはあくまでもスタート・ラインの話であって、その後の働き方によって私有財産の違いが出るのは当然だと考えた。

  • 321P

    このように基本的人権といえども、場合によっては制限を受けるわけですが、たった1つだけ、どんな理由があろうと国家が干渉することのできない権利があるのをご存じですか。
     それが『内心の自由』、日本国憲法で言うところの『思想信条の自由』です。
     国家権力は人間の外面を規制することはできても、絶対に内面に立ち入ってはならない。これこそが最も重要な人権です。この権利を侵されたら、民主主義は完全におしまいになる。