推薦図書紹介

■カモメのジョナサン【完全版】 著者 リチャード・バック
ISBN978-4-10-505805-0
紹介者:工藤秀雄(西南学院大学商学部教授)
【紹介文】
1970年に発表された本著は、世界で4000万部以上のベストセラーとなった。2013年、最終章Part Fourが加えられた「完全版」である本著が刊行される。なぜ著者が、1970年時点で執筆していたPart Fourを、今になって加えたのか、現在を知る私たちは理解できる。
  • 11P(完全版への序文)

    「タイプの文字は消えかけていたが、言葉はわたしの精神のこだまであるように思われた。正確には、かつてのわたしの精神のこだま。これはわたしが書いたのではない、あいつが書いたのだ。あの時の、あいつが。
    原稿を読み終わった時、わたしはあいつの警告と希望の声を充分に聴いたと思った。
    『おれが何をしたかくらい、分かってるさ!』とあいつは言った。『あんたのいる二十一世紀は、権威と儀式に取り囲まれてさ、革紐で自由を扼殺しようとしている。あんたの世界は安全にはなるかもしれないけど、自由にはけっしてならない。わかるかい?』そして、最後にこう言った。『おれの役割は終わった。次は、あんたの番だよ』」

  • 84P

     「彼はごく単純なことを話した-つまりカモメにとって飛ぶのは正当なことであり、自由はカモメの本性そのものであり、そしてその自由を邪魔するものは、儀式であれ、迷信であれ、またいかなる形の制約であれ、捨てさるべきである、と。
     『捨てさってよいのですか』と、群衆の中からひとつの声があがった。
     『それがたとえ群れの掟であっても?』
    『正しい掟というのは、自由へ導いてくれるものだけなのだ』ジョナサンは言った。
    『それ以外に掟はない』」

  • 150P

    「そうだ、そこに鍵がある、と若いアンソニーは言った瞬間に自分でわかった。答えは得られなかったが、わかったのだ。自分は、感謝し、喜びながら、あの伝説のカモメのあとを追って命を投げうつことになるにちがいない、と。自分の説を証明し、生きることに意義を見出す答、日常を優れた喜びのあるものにする答えをわずかであっても確かに示してくれるカモメ。そのカモメを見つけるまでは、自分の生活は灰色で荒れはて、雑然とし、目的もないままであるにちがいない。」