推薦図書紹介
者らは「インテリジェンス」をキーワードに、2006年から共著し、2012年からは1年に1度のペースで、世界情勢に関し対話を続ける。「危機」、「目を背け無視したいおぞましい現実」、「事前に想像不可能と思われる実際に起こる非常事態」の重大情報を、いかに捉え生き残りに活かせるか。当シリーズは時事問題を解きながら、その技法を読者に伝える。
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佐藤 いまの中国の強権的な政治体制と膨張主義が、日本をはじめとする東アジア、そして西側同盟を束ねてきたアメリカにとって、大きな脅威に映っていることは間違いありません。ただ、それはスターリン時代のソ連とは明らかに異なります。」
「手嶋 それだけに、かつてのソ連といまの中国を二重写しにして脅威を言い立てるだけでは、『二十一世紀の中国』といかに対峙していくべきか、的確な『解』を見つけることはできません。佐藤さんと本書を編んだ理由はこの一点にあると言っていいですね。 - 173P
佐藤 そうです。ホッジャは中国の『第三の世界論』が、ソ連と戦うために、二番目の的である米国と手を握るマキャベリズムであることを冷徹に認識していました。(中略)
しかし、ホッジャは、毛沢東や鄧小平のマルクス・レーニン主義はレトリックにすぎず、あの国の本質を帝国主義とみていました。この冷静な視点から学ぶべきことが少なからずあります。 - 184P
手嶋 そう思います。インタビューは、早朝から長時間に及んだのですが、迫りくる危機にどう備え、人々をパニックに走らせないよういかに采配を振るったのか、淡々と語って倦むところがありませんでした。機密の書類まで見せてくれました。そう、別れ際にぽつりと漏らした言葉はいまも忘れられない。」
「佐藤 いまでは李登輝さんの遺言となりましたね。」
「手嶋 ええ、李登輝さんは『両岸の緊張はひとまず去ったが、海峡にはうねりが再び高まってくる』ときっぱり言い切り、『その時は日本が当事者だよ』と-」
「佐藤 台湾海峡危機は、日米同盟が想定する最重要にして最大の有事ですから、日米安保条約を結んでいる日本は、まさしく当事者そのものです。しかし、九十六年当時の日本にはまだそうした危機感は希薄でした。我が事のように日本のことを心配してくれた李登輝さんらしい言葉ですね。