推薦図書紹介

■ヒーローを待っていても世界は変わらない 著者 湯浅誠
ISBN978-4-02-251012-9
紹介者:工藤秀雄(西南学院大学商学部准教授)
【紹介文】
著者は、貧困問題の活動を行うNPO法人の理事で、2009年から2012年の間、内閣府の参与を務めた。ホームレス支援に尽力していた著者が、政策決定に携わった経験を踏まえながら、「民主主義は面倒でうんざりする」システムでありつつ、主権者である日本国民は、そこから降りられないことを指摘する。著者は、東京大学大学院で政治思想史を研究していたことから、本著は平易な言葉で語られつつ、背後に政治史を踏まえた議論がなされている。
  • 30P

    状況を規定してしまうカリスマ性、反対意見を考慮しない大胆さ、『えいやっ』の即断即決力。これらが『強いリーダーシップ』の中身だと言いました。ここに示されている人格は、よく言えば『突破力がある』、悪く言えば『独善的』ということになるかと思います。(中略)
     私が気になっているのは、なぜこのような人格が待望されるのか、それを待ち望む人たちの心理です。そしてそれがもたらす帰結です。(中略)
     しかし他方、私はそれが、待ち望んでいる人たちに最終的に望ましい帰結をもたらすとは、どうしても思えないのです。
     理由は簡単です。先に述べたように、日本では一億二千万の利害がひしめきあっています。そしてそれは、誰がヒーローになっても、基本的には増えもしなければ減りもしない。

  • 66P

    『こんな現状、微修正したところで済むわけがないだろう。抜本改革が必要なんだ』と言われれば、『微修正で十分です』とはなかなか言えない。それを言っている人が頭に描いている抜本改革がそのまま実現するのであれば、抜本改革したほうがいいのだとおもいます。しかし現実は、もう少し複雑です。
     十分に機能していないから一気に取り替えてしまおう、バッサリやってしまおうという心理には、焦りを感じます。それは一つひとつ積み上げながら改善していくことを『待っていられない』という焦りです。注文した商品がすぐに届かないという時に感じる消費者の焦り、不具合が生じたら手直しするより買い換えたほうが手っ取り早いという消費社会の焦りに通じるものです。
     そこに飛躍が生まれます。一商品とは異なる政治・社会システムを、一商品と同じ見方で見る飛躍、そこで翻弄される人々の生命と暮らしを軽視する飛躍です。

  • 69P

    先に、人々が仕事や生活に追われ、余裕がなくなってきたからこそ、尊重されるべき自分の必死の生活とニーズが尊重されない不正義をなんとかしたいとヒーロー=切り込み隊長に期待していく、と述べました。同じ苦しさが、人々から『面倒くさくて、うんざりして、そのうち疲れる』民主主義と根気よくつきあう力を奪い、焦りを生み出していきます。
     人は疲れているとき、さらに疲れることはしたくありません。疲れているときには、他人の話をじっくり聞くことなどできないし、ガマン強く他人と意見をすり合わせることなどできない。面倒くさいことはなるべく回避して、『何でもいいから、さっさと決めてくれよ』とパッとサッと物事を進めたくなります。